能書きを書くのが趣味。

文章がすぐ長く小難しくなるけど、好き放題長く小難しく書く。

2018-01-01から1年間の記事一覧

「上遠野浩平論」8.5~キャビネッセンスと生命と心(『ソウルドロップシリーズ』)

上遠野浩平論の第8.5回です。 第8.5回、という言い方をするのは、今回の記事では本来この連載が目ざす文学論の論旨にあまり必要ない話をするので。もともとは第8回で〈戦士〉の話をするついでに、1パラグラフぐらい使って簡単に触れておこう、ぐらいに思っ…

「上遠野浩平論」⑧~〈戦士〉の条件(『ぼくらは虚空に夜を観る』ほか)

上遠野浩平論の第8回です。 本論は、上遠野浩平の作品世界について文学論的検討を行うことを目指している。前回の第7回では、だいたい2000年以降の作品群を第2期上遠野浩平と呼ぶことを提案し、その第2期では〈決定論的な運命〉という概念が上遠野世界の…

"マシな野党"の体現者、津村啓介(国民民主)を褒め上げる

今回は、国民民主党の議員・津村啓介について書きます。 実はこの話題の記事は前々から書く準備を進めていたのだが、この8月13日に国民民主党の代表戦に出馬表明したとのことで、急いで形にすることにした。 僕は津村議員の選挙区である岡山市在住だ。近所…

「上遠野浩平論」⑦~決定論的な運命(『パンドラ』『ジンクスショップ』『酸素は鏡に映らない』)

上遠野浩平論の第7回です。 いま本論は、連載の第5回以降を第二章と位置づけ、上遠野浩平の文学が追及してい美意識・問題意識について検討している。その初めとなる第5回と第6回では、「可能性」が上遠野文学の中核であるとの認識の元、〈世界の敵〉とい…

岡山県真備町・小田川の決壊における背景

今回は、このほど岡山県の倉敷市真備町で起きた洪水について書きます。 被災者の皆様におかれましては、お悔みとお見舞いを申し上げます。 しかしそれにしてもなんてタイミングで起きた災害だったか。 今回決壊したのは、倉敷市真備町の南を流れる小田川とい…

真の「民主主義の死」は公文書偽造で起きているのではない

今回は民主主義について書きます。 というのも、このほどのモリカケほか公文書偽造の件でもって、「民主主義の死である」などという意見が散見されるからです。その意見は正しい。公文書の偽造がまかり通るようになると、民主主義は立ち行かなくなる。 しか…

「なんでアイツは脱走なんかしたの?」とかいう疑問の危うさ

今回は例の脱走したアイツの事件について思うところを書きます。 というのも、知っての通り無事に捕まりましたので。 この事件が起こっている間、僕が住んでいる岡山県は比較的地理的にも近いということもあったのか、職場やら実家やらで、しばしば、「逃げ…

「上遠野浩平論」⑥可能性に基づく種々の考察(作品いろいろ)

上遠野浩平論の第6回。 前回の第5回では〈世界の敵〉というモチーフがどのように描かれているかをしてるか検討することによって、上遠野浩平の中に、「ヒトには無限の可能性があるという」前向きな希望と「可能性は将来的に必ず失敗する」との悲観的絶望が…

「上遠野浩平論」⑤〈世界の敵〉はなぜ敵なのか(『夜明けのブギーポップ』『VSイマジネーター』)

上遠野浩平論の5記事目。ここからは第2章です。 第1章に位置付けた第1~4回では、上遠野浩平という作家の来歴を中心に見ることで、この作家が所謂「セカイ系」に属する作品を書いていること、それはブームを狙ったのではなく、むしろブームのほうが上遠…

「上遠野浩平論」④傑作セカイ系作品にみる天才性(『ブギーポップは笑わない』)

祝アニメ化!!!……とは、関係なく書いていた、上遠野浩平論の第4回です。 期せずしてタイムリーなことになった。 第1回・第2回・第3回まで、上遠野浩平という作家の生い立ち・性質・執筆スタイルを詳しく検討することで、上遠野浩平を論じる上での基礎…

投資家以外向けに「なぜ仮想通貨は危険?」を素人解説

今回は仮想通貨について書きます。 しかも、仮想通貨は危険!というスタンスで書こうと思います。というのも、このほど仮想通貨バブルが無事に……というのも変ですが、はじけましたので、危険だよって意見を素人の僕がネットで表明しても多めに見てもらえるよ…

「上遠野浩平論」③上遠野浩平の創作哲学(『製造人間は頭が固い』)

上遠野浩平論の第3回。 第2回では、エヴァよりも前に書かれたと思われる投稿時代の作品が既にセカイ系の特徴を踏まえていることを通して、上遠野浩平はセカイ系ブームの影響を受けていないのだと主張した。 今回は、更にその主張を補強するために、上遠野…

「上遠野浩平論」②誰より早くセカイにたどり着いた作家(『冥王と獣のダンス』)

上遠野浩論の第二回。 前回は上遠野浩平のプロフィール、あとがき、インタビューの証言を基に、上遠野浩平がどのような人生を送ってきているかを探り、それが作品のバックボーンとなっていることを確認した。 今回からはいよいよ文学論らしく、発表作品の分…

「上遠野浩平論」①上遠野浩平という人物(インタビュー・あとがきなど)

今回は、上遠野浩平、という作家について書きます。 作家名だけを言われてピンとくる人がどれだけいるのか。ガチ中のガチファンである僕には逆に想像がつかないが、「あのブギーポップの」という言い方をすれば、まあ結構な数の人が知っているのではなかろう…

科学によって根拠を失った「人権」という概念

前回、人権概念の社会的変容について書きました。 gentleyellow.hatenablog.com でも実は、「人権」の危機について語り切れてない部分がある。 前回は権利概念の歴史的バックボーンや、社会情勢の変化、ヘイトスピーチ問題や、ポリティカルコレクトネスとい…

ガキ使批判記事に見られた「人権」概念の変容

今回は「人権」について書きます。 なぜ人権について書くかというと、ハフィントンポスト記事の話題をTwitterで読んだからです。 この件について、ハフィントンポストは批判されています。最も頷けた批判は、「エディ・マーフィーの真似をすることは、黒人を…