新三国志(ソシャゲ)17鯖でここ一年に起きたこと
今回は、『新三国志』というコーエーテクモゲームズ監修のソシャゲでサービス開始から1年間に起きたことについて書きます。
実は、僕自身がこのゲームをやっている訳ではないです。しかし、実際にプレイしている友人のC君から聞いた話があまりにも面白く、またその一部始終は今のところ特にネットなどに纏められてはいないようですので、非才ながら司馬遷の志を次世代に繋ぐべく筆を取らせていただくことにした次第。
あくまでも伝聞なので、不備があるとは思うし、基本C君視点の話にはなるのですが、話を聞いて去来した感動を是非とも共有させていただきたいと思います。
+2018年12月11日、激震
そもそも『新三国志』は、コーエーテクモゲームズが完全監修のもと中国企業が製作、日本向けに配信しているスマホゲームです。2018年8月にリリースされ、内容もなかなか好調な様子。
このゲーム、僕自身は先述したようにやっていませんが(他のゲームが忙しいため)、基本的にソシャゲには辛口評価を下すC君がかなりマメにやっているのだから、相応の面白さがあるはずだと信じられる。C君は根っからの中国史オタである、という面を差し引く必要はあるでしょうが、彼が1年間同じゲームを続けているっていうのは、相当なことなんですよ。伝われ、この驚き。
あと、19年8月めでたく一周年を迎えたそうです。 続いているということを鑑みても、やはりいいゲームなのだろう。
コーエーファンのC君は、このゲームには登場当初から注目しており、最古参の一人としてサーバー17を舞台に独自に戦場を駆け巡り、群雄割拠、栄枯盛衰を繰り広げました。
この手のゲームはやっぱり序盤が乱世で面白いところがありますからね。
プレイヤーはみんな、自分なりの覇道を突き進み、いつか天下を獲る日を夢見ていたはず。
だが2018年12月11日!!
C君の主戦場だった、サーバー17に風雲急を告げる事態が!!!
(ジャーンジャーンジャーン)
サーバー17、中華統一、成る!!
言わずもがなですが、上の画像のマス目を全プレイヤーが互いに奪い合っているのが『新三国志』というゲームです。つまり中華統一が成されたということは、他のプレイヤーの抵抗を全部なぎ倒して、圧倒的な戦力で戦場を蹂躙したということです。
いくらなんでも、ソシャゲで普通そういうことは起こらない。現に他のサーバーではこんなことはまだ起こっていませんでした*1。
全サーバーで初めての快挙。
しかもあまりにも急な快挙です。まさかそんなことができるとは!? と誰もが思った*2。
一体何者がそれを成したというのか!?
+天が乱世に遣わせた麒麟児 ichi
サーバー17で三国時代の中華を制したのは、ichi というプレイヤーでありました。
彼は知る人ぞ知る、世界的なプレイヤーです。
元はといえば、ichi は『戦国炎舞』というソシャゲの高額課金者であったそうです。だが、彼はただの高額課金者ではない、あまりにも高額の課金者なのでなんと彼の引退が公式からアナウンスされたという。
*参考記事↓
参考記事の内容を抜粋します。
- 公開されたスクショから、戦国炎舞に3億3000万円以上課金していたことが判明。
- 同じペースで課金していれば最終的に5億円は課金していたはず。
- 戦国炎舞では後発組だったが一瞬でトップまで上り詰めた。
- 初心者の質問に答えつづけ、ゲームコミュニティの中心人物だった。
- 彼が居たからゲームを続けたプレイヤーも多い。
- 他の高額課金者は嫉妬を覚えることすらできず、ありがたいものを見たという気持ちになる。
全盛期の ichi 伝説コピペか何かか?
いえ、彼は今でもバリバリの全盛期なのです。
彼が2016年の『炎舞』引退以来、何をしていたのかは我々には定かでないですが、C君が異変に気付いた時には、既にサーバー17は ichi 軍団の圧倒的な財力により蹂躙され尽くしていました。そうなってから初めて、17鯖の諸侯たちはichiという稀代の麒麟児の存在に気付きました。
恐らくはその前段階には、桃の木の下にある小さな庵で過ごしていたichiの元に、何者かが訪れてこう言ったはずです。
「先生、実は面白いゲームがあります。ご存知コーエーテクモゲームズが監修した新三国志というスマホゲームです。しかし諸侯は驕り荒ぶり、民は放浪し、国は乱れるばかりです。先生が戦を憂いて、こうして隠居なさっておられるのは重々承知の上ですが、先生ほどの仁徳のある君主は他におりません。どうか立って天子となっていただけませんか。そしてわたくしを一番の臣下としてください」
これに ichi 師は答えて曰く、
「民が苦しんでいるならばなぜ立たないということがあろうか」
とかなんとか。
ichi 師がゲームを始めたのは、どうやら2018年10月末のことです。これは中華統一の僅か1カ月半ほど前でありました。
+ichi という男の課金実態
しかし、かつて別ゲーで伝説級の課金をしていたとはいえ、『新三国志』というゲームに、ichi 氏はどれほどの力を注いでいるのでしょうか?
別にあらゆるゲームに廃課金しているわけではないかもしれない。
これについて、C君に聞きました*3。
具体的に、ichi はどれくらいの強いのよ?
「具体的な数字の話は……ほんとやってもらわないとわからないところがあるんだけど」
と、彼は前置きしてから説明した。
(と、言わないと嘘になりそうなので実際のプレイヤーの皆様は以下の説明の細部は多めに見てください)
例えば『新三国志』において、プレイヤーの強さの指標となるある数値がC君の場合は20万パワーほどあります。
ichi 氏は、これが40万パワーあります。
C君のおよそ倍です。
え、無課金と比べてたった倍程度なの? と僕は思いました。しかし、これはとんでもない数値のようです。
『新三国志』は、この手のゲームでよくある、砦に新たな施設を増築することで軍隊が強くなる方式を採用しています。この施設ですが、1個つくるごとに40~80程度のパワーが増えます。
つまり、C君とのパワー差20万というのは、ざっくり施設2500個分の差があるということです。
更にこの施設建築には、多大な資源はもちろんのこと、何よりも時間がかかります。施設1つにかかる施工期間はだいたいリアル3日ほどで、これは全プレイヤー共通です。ただし、この施工期間を短縮する方法があります。もちろん課金です。
即ち、2500施設分の差があるという、イコール、 ichi氏 は施工短縮だけで2500回以上の課金を行っています。もちろん実際にはもっと多いはずで、ichi師は『新三国志』でも後発組ですから、C君たち最古参に追いつくまでの時間も課金で短縮しています。
なるほど、2500回施工短縮をしていると。
で、それは一体1回にいくらリアルマネーがかかるのかね?
「……とりあえず今の俺の城を施工短縮で強化しようとしたら2万円かかるね……」
だそうです。
もちろん低レベルのうちはもっと安いのですが、それにしたって1カ月で他プレイヤーをぶっちぎる回数の施工短縮課金を、ichi 氏は確実にしています。
2万円課金を一体何回すればそこまでいけるのだろうか。
仮にめちゃめちゃ大目に見て、低課金でできる分が1000回はあったとしても、1500回はやってるよね……2万×1500yen……? 僕が計算を間違っているのか……?
「まてまて、今のは拠点のパワーの話であって、武将とか武器とか軍とか兵法とか、いくらでも課金強化要素はあるから」
課金要素がもっとあるの!?
それはもう億待ったなしということだよね!?
念のため確認しておきますが、これソシャゲの課金の話ですよ。
+ichi という漢の兵法
だが ichi とは、財力に任せて敵を殴るだけの卑劣漢なのだろうか?
春秋三国時代のなみいる将軍たちは、札束で人を殴るしか脳がないオッサンに蹂躙されたとでもいうのか。
そうではない。Cくんはこんなエピソードを話してくれました。
「ichiさんといえども、負けたことが皆無なわけではない」
あるとき、ichi が負けたとの一報がCくんに届いたという。
やる気だけはある無課金勢として雌伏の時を過ごしていたCくんはいきり立ちました。そうかそうか! やつに勝つ方法があるのか! してそれはどうやったのだ。
情報は簡単に見つかった。
というのも、ichi がそのときのログを公開していたので。
ichi は自分が負けると、広くログを公開して諸侯たちの意見まで求めたのだ。
そして、その時の状況を徹底的に分析した。
そうしてわかったのは、当時はまだマイナーだった「相手を同士うちさせる計略」が、ichiの最強軍団にブッ刺さっていて、その結果彼の軍は破れたということ。
ichi は即座に対策を打った。豊富な財力を駆使して、同士討ちの計略に耐性がつく装備を整えた。前線にはカッチカチの防御特化兵を、後衛には攻撃特化兵をおいて、今まで以上に生半可では太刀打ちできない、盤石な耐性を整えた。
そういう訳でCくんはもう火を点けかけていた反撃の狼煙を速攻で片付けた。
Cくんが ichi 敗北の報を耳にしたときには、ichi 軍団はもう、今まで以上に手がつけられない存在になっていたからである。
このエピソードを聞いて史家の僕は思いました。
ichi がすごいのは財力がではない。
なんていうんでしょうか、彼はやるからには徹底的です。
ゲーマーがたまたま金を持っているのではなく、金稼ぎも何もかもを徹底的にする気質の人間が、たまたまシミュレーションゲームも好きである。
そういう気配がしますね、この歴史上の人物からは。
+天帝 ichi との戦い方
『新三国志』では、サーバーランキングで一位になると帝(みかど)の称号が得られます。
もちろん17鯖の帝は ichi です。
まさに天に帝になるべしと定めらえた男と言えるでしょう。
しかし覇道・天道に敵多し!
特に17鯖は、天下統一までやっているのだから、流石にみんな「ichi がヤバイ」という事は把握しています。三国志のゲームをやろうなんて思うやつはみんな我こそは天下人であると思うような野心家ばかりです(C君を見ての経験則です)。
だから皆、何とかして ichi に一矢報いてやろうとしたはず。
僕は史家としてC君に尋ねました。
「 ichi と戦う方策が何かあるのではないか? 奇策、計略の類は用いたのか?」
C君は教えてくれました。
ichi と戦うにあたって、共有された指針があったそうです。
- ichi と1対1の状況になったら即逃げろ! 絶対に勝てないからである。
- ichi と1対2の状況になったら即逃げろ! 絶対に勝てないからである。
- ichi と1対4の状況になったら即逃げろ! 絶対に勝てないからである。
- ichi と1対8の状況になったら全力で攻撃しろ! そうすれば ichi の体力をそれなりに減らせるからである。
その絶望的な指針は一体なんなんだよ。
なお、1対8というのは、平面マップを使った戦略シュミレーションである『新三国志』のシステム的な上限値になります。
三国志が主題であるこのゲームは、後漢の首都である洛陽が戦略上の超重要地です。この場所を長時間抑えていればいるほど、高レアのキャラが配布されるので、誰もがこの都が欲しい。
しかし当然、洛陽は ichi軍団 が常に抑えています。
長時間、洛陽の支配権を持っていればいるほど、ichi 軍団は強化されるということです。これでは ichi はますます手が付けられなくなってしまいます。本当は早々に波状攻撃でもなんでもして、 ichi から洛陽を奪うべきです。
しかしそれができないのです。ichi が強すぎて、先陣を切って突っ込んだ奴から必ず死ぬからです。
+17鯖ドラフト同盟の成立
このような圧倒的なパワーをもって、ichi軍団は乱世の中華を統一せしめたのでした。
ichi の威光は17鯖において圧倒的であり、ワールドチャットでは時折、三国志とはまるで関係ないビジネス関係の相談が飛び交うといいます。億の課金が出来る人ともなれば、そりゃあ当然ビジネスの相談もできますよ。ゲームから離れてすら人間性能が強力すぎる。
けれども、まあ、この現状はゲームとしてはあまりにもあんまりなのは否めなかった。
なにしろ ichi とその仲間たちに勝つことは誰にもできませんからね。天下が統一されたまま、他の軍団は全く領土が取れないのではそもそもゲームにならない。
そこで17サーバーでは、ユーザー間で特殊なルールが制定されました。
一定期間ごとに、ランキングトップ勢の軍団リーダーが話し合いの場を持ち、ドラフト制を用いて交代制の同盟関係を結ぶ。同盟関係にある間、軍団同士は互いに攻撃しない。
ここで言う同盟というのは、ゲーム上のシステムとは何も関係ありません。単なるプレイヤー同士の口約束だし、運営はまったく関与していない。
その意味するところは、要するに、ある一定期間ごとに交代で Ichi と同盟関係を結ぶことができる、という話。
ichi が居るからには、こういう特殊ルールでも作らないとやってられない。もはや17鯖において、ichi とはゲーム環境のことであり、『新三国志』は ichi が存在する中華をどう生き抜くかを競うゲームなのです。
いやはや、ここまで来たか、という感じですね。
ちなみに、時おり同盟関係を無視して攻撃を始めてしまう軍団員が出て、粛清の嵐が吹き荒れることもあるとか。
なにそれめちゃくちゃ面白そう。
+黒雁公の乱
しかし、繰り返しますが、三国志のゲームをやろうなんて思うやつはみんな、我こそは天下人である、と思うような野心家ばかりなんです。
ichi が強い、それがなんだ。
奴に勝ちたい。勝てるはずだ!
当然そう思う人達もいます。
その筆頭は、17鯖でサーバーランキング2位のプレイヤーで、仮にここでは黒雁公と呼ぶことにしましょう。彼は、C君曰く「ichi ほどではないにしろ十分手に負えないほど強い」武将です。
黒雁公は各地の強力な諸侯に文をしたためたそうです。
たぶんそれはこういう内容でした。
「この中華は今や ichi という成り上がりに支配されています。天がこんな状況を許すはずがない。多大すぎる課金は悪であり、悪は正されねばならない。志あるものは我々と伴に立ち上がれ!」
かなりの諸侯がこの檄文に呼応したらしい。
そして2019年初春!
黒雁公同盟軍による ichiへの一斉攻撃が行われた!!
同盟軍にはサーバー2位の黒雁公を筆頭に、17鯖でも選りすぐりの有史たちが参加。シュミレーションゲーム特有の攻撃中ラインが、ichiの拠点に向けて一斉に伸び、まるで漫画の集中線のようだったとC君は言います。
先に、Cくんからは、8対1の戦いならば ichi の体力を減らせる、という話を聞いていましたよね。それを波状攻撃で繰り返せばもしかして勝てるのか。
ましてや、黒雁公たちは曲がりなりにもサーバーで2番目に強い人たちです。ステータス上の差もそこまで圧倒的には見えない。
これはもしかしたらするのでは……!!!
と、思いますよね。
結論から申し上げますと、全然だめだったようです。
さっきC君から聞いた「8対1ならある程度いける」という話が、実はもう嘘だったことが、黒雁公の戦いの結果わかりました。
C君曰く、「そうなるってことは ichi は外部から見れる数字では判別がつかない、隠しステータスみたいな部分までバッキバキに鍛えているってことなんだよね」だそうです。
この黒雁公の乱を最後に、17鯖では ichi帝 への大規模な反抗作戦はなりを潜めてしましました。諸侯たちの野心の矛先は「2位以下の争いの中で少しでも上に行きたい」という風に完全にシフトしてしまったとか。
+覇道を征く〜未来へ〜
こうしてichi 帝は、盤石な天下を我が物にしたまま、『新三国志』というソシャゲで一周年フェスを迎えているのでした。
今回はC君の証言をもとに17鯖での状態をまとめたので省きましたが、『新三国志』では各サーバーのトップ勢同士の対戦、というイベントも開催されており、そこでもichi がトップの座をほしいままにしているそうです。
いやもうなんだ。圧倒的すぎるわ。
ただし、今回の記事は、何度も言うようですが、C君から聞いた話があまりにも面白かったので門外漢の僕が伝聞をもとにブログに書いただけのものです。なので、正直面白さ重視で誇張してるところがある。C君の分と僕の分で、おもしろフィルターを2回も通ってしまっています。
本当はどうか? については、是非ともあなたが実際のゲームで確かめてください。
もしかしたら貴方はそこで、21世紀の覇道、というやつを目にできるかもしれませんよ。