能書きを書くのが趣味。

文章がすぐ長く小難しくなるけど、好き放題長く小難しく書く。

真の「民主主義の死」は公文書偽造で起きているのではない

 今回は民主主義について書きます。

 というのも、このほどのモリカケほか公文書偽造の件でもって、「民主主義の死である」などという意見が散見されるからです。その意見は正しい。公文書の偽造がまかり通るようになると、民主主義は立ち行かなくなる。

 しかし、僕が気になったのは「君たちは偽造が発覚するまで、民主主義がまともに生きているとでも思っていたのか?」ということです。公文書偽造によって理想の民主主義は確かに立ち行かなくなりますが、理想を実現するためには他にもいくつかの条件があり、それは今の日本で明らかに満たされていません。民主主義は最初から生きてなどいない。下手をすると、立ち行くことなど原則ありえない制度が民主主義であるかもしれない。

 もしも我々が、赤い布を見た牛の如く単にズルい奴に怒ってるのでなく、あるいは憲法改正に反対という理由で敵の弱点を見つけて喜んでいるのでもなく、本気の本気で民主主義を生き返したいと望んでいるのならば、安部政権以外のにも同じ怒りを向けねばいけません。

 具体的には、教育と、マスコミと、自分自身に怒りの矛先を向けねばならない。

 そして逆に、敵には怒りを向けることなく意見を聞かねばならない

 なにより、野党に方針の変更を求めないといけない

 

 本記事では僕なりに、理想的な民主主義とはどのような状態になるのか? ということと、それを阻害している今の日本の問題点とは? を書きます。それによって、本当は何に怒らねばならないかをハッキリさせます。

 

 

 +理想の民主主義とはどういう状態か

 

国会中に遊んでいる人たちのイラスト

 まず、民主主義とは何か、について。このような記事を読もうと思った人に言うのは恐らく釈迦に説法でしょうが、記事の流れとして。

 

 民主主義(デモクラシー)とは、民衆が主権者である政治体制のことです。

 

 これは何も複雑なところの一切ない、非常にシンプルな考えです。

 つまり普通の国ならば主権者は王様です。王様と同じ役割を国民がする国が民主主義国家です。自由だとか権利と義務だとか、そういう意味は一切含みません。王様に逆らってはいけないように、ただ国民*1に逆らうな。それだけの話です。

 実務としては、歴史上はじめて民主主義を実践した都市国家アテネやそれを参考したローマのように、投票と議会を運営します。

 しかし、それはどうやって上手く運営するのか?

 この時点で話が複雑になりだす。アテネの民主主義は衆愚政治収賄と独裁の繰り返しだったのは高校レベルの世界史で学んだ通り。そうならない為にはどうすべきか?

 理論的には、どういう状態になればいいのかは、ハッキリしています*2

 

  1. 人国10万人の国で、A、Bさんが大統領に立候補する。
  2. 十分に賢い国民が情報を精査し、どちらがふさわしいか判断する。
  3. もしAが7割の正しさ、Bが3割の正しさを持っているとしたら、国民は十分に賢いのでそれを見抜き、A´グループが7万人、B´グループが3万人に分かれる。
  4. A大統領が就任し、全ての国民がそれを認める。
  5. A大統領はA´グループだけでなく、B´グループに配慮した政策を実施する。なぜならB´グループの3万人が反乱を起こすと国が転覆するので。
  6. 同じプロセスが定期的に行われる。

 

 本記事ではきっかけが公文書の話なので、まず2を話題の中心に据えることになります。

 

 

+偽装のない公文書がなぜ理想の民主主義に必須か

 

 かわいい王様のイラスト大臣のイラスト

 上で述べた理想の民主主義プロセスを正しく回すには、偽装の無い公文書が必須です。だからみんな公文書偽装に怒っています*3

 

 民主主義とは、先に見たとおり、王様と同じことを国民がするということです。

 じゃあ王様とは何をするものなのか

 

 ここではイメージ優先にまとめましょう。

 王様が玉座に座ってると、部下から報告が挙がってきます。「○○という地方で干ばつが起きております」「○○に敵が攻めてきました」「○○のためには税金を集めねばなりません」などなど。それを基に、王様は、支援物資を送れ、敵を迎撃せよ、徴税権を地元有力者に与えて仕事をさせよ、とか政策を決定します。*4

 このとき重要なのは、王様は基本的に○○を自らいちいち見に行ったりしない、ということです。

 あくまでも部下の報告を基に判断する

 

 では、もしその報告がウソ情報だったら? 王様はウソ情報をもとに判断して、間違えるでしょう。

 王様が部下に騙された事例は歴史上いくらでもあります。奸臣がウソの反乱計画を王に教え、忠臣が切腹を命じられて、最終的に国が亡びるだとか。そんなことはかなり頻繁に起きています。

 だから公文書偽装はイコール亡国の危機なのです。

 王様が間違えたら 国がほろびる。

 だから間違えの原因になる要素はあってはならない。当然のことです。

 

 ……しかし、公文書に偽装さえなければ王様は間違えないでいられるのか?

 僕がひっかかってるのはそこだ。

 

 

+公文書以外に必要なもの

 

 グループディスカッションのイラスト

 民主主義は、結局のところ国民が王様の役をする制度です。

 ですので、理想的な民主主義とは「国民が政治判断を間違えない状態」を意味します。政治の理想とは政治が上手くいくことです。国民が間違えてもいいんだったら、それは公文書に偽造があってもいいということだ。

 

 それを踏まえて、上で確認したプロセスをもう一度確認しましょう。

 

 たとえば2番目の項目には、「十分に賢い国民が」政治を判断するのだと書いておきました。王様が無教養だと政治は間違える。これもまた当然のこと。さて我々日本人は、というか「あなた」は政治を十分に賢く判断しているのか? もっと言えば、そもそも判断をしているか? インフルエンサーが拡散した自分に都合のいいツイートをRTしてるだけではないか? 考えることを放棄して、国民がそもそも政治的判断をしないことも、当然ここでは問題になります。

  あと、3項目には、10万人の国民が7万と3万にピッタリわかれるとも書いておきました。今の日本の投票率はだいたいどんな選挙でも3割~4割ぐらいですから、国民はせいぜいAグループ3万人とBグループ1万人に分かれ、のこり6万人は態度不明のNグループです。6割がた態度不明の王様とか、結構な害悪ではないでしょうか。しかも、ちゃんと投票した4割の人たちは"政治的に熱心な人"が主で、それは悪く言えば、中立的で冷静な人が少ないということ。投票した人の意見だけを反映した政治は、中立性を失っているかもしれない*5。それは民主主義的に問題があるんじゃないのか*6

 5項目めには、代表者は反対派の国民の声も聴くことも必要だと書いておきました。上の例えでは代表者は大統領ですから、反対派とは少数派とイコールですが、選挙区制をとる日本の場合はそうではない。議員は、自分自身を支持者たちだけの代表者としてではなく、他候補を支持した地域の人たちの代表でもあると考えねばならない。テレビでよくみるあの議員さんは、自分に投票しなかった人の意見を聞いて、自分の意見に取り入れたりしているか?

 

 こういう理想の民主主義の話なんか、この記事をクリックした政治的に熱心なブロガーさんたちは、言われるまでもなく知っているでしょう。

 でも、僕がこの記事で言いたいのは、「ほならね、公文書偽造を怒るのと同じ勢いでね、国民の不勉強に怒ったり、無投票に怒ったり、したんですか」みたいな話なんです。

 もっと言えば「ほならね、公文書偽造した人らの言い分をそもそも聞こうとしてない政治家たちが*7、普段は、自分とは反対の意見に耳を傾けたりしてるというんですか」とかね。

 

 この憤りに何の意味も効果もないことは分かってる。

 確かに不正に怒ってるときは怒りにまかせて行動したほうが運動は盛り上がるかもしれない。

 でも筋が通ってないモンは、やっぱり筋が通ってないんだよ。

 

 

+特に必要な「ジャーナリズム」に基づく報道

 

 嫌な面接官のイラスト(就職活動)

 なかでも特に大きな問題がいくつかあります。

 そのうちの一つとして、理想の民主主義が実行されていない状況でとりわけ批判の対象にされるべきなのが、マスコミでしょう。

 

 皆様は「ジャーナリズム」という概念について正確なところを、ご存知でしょうか。

 ジャーナリズムというのは、18世紀に新聞(ジャーナル)ってものが出てきた時に、政治報道を主に行っていたその新聞を運営する上で持つべき倫理感という意味で語られ出した概念です。

 なぜ倫理観が問題になったのか? それは、インターネットも無かった当時、民衆にとって新聞だけが政治的判断を下す材料だったからです。民主主義下に置いて民衆が王様ってことは、王様は新聞だけを見て政治的決定を下しているということ。冷静に考えて、こんな怖い話があるか? だからまあ、せめて新聞を作る人にはかなり慎重な良識を持ってもらわねばならない、という。ジャーナリズムというのはそういう話。つまり、ジャーナリズムの良しあしっていうのは「民主主義の役にたっているか」だと言っていい*8。よく言われる客観報道とか真実を伝えるとかいう話は、そうしたほうが民主主義に役立つから言い出したことです。

 

 そうした理解を前提にすると、果たして今の報道ってのは、「民主主義の役に立って」いるのか? 

 これは本当に問題だと思ってるんですが、今の政治報道には、そもそも「民主主義の役に立とう」という意識自体が希薄です。

 

 もちろん、 芸能人のワイドショーや煽情的なだけの犯罪報道やりながら、ジャーナリズムがどうとか知る権利がどうとか、ちゃんちゃらおかしいわ……みたいな話は当然としてですよ。

 例えば「この報道で社会正義を成したい」だとか「国民を正しい方向に導きたい」だとか「悪の政治家を懲らしめたい」だとか。報道の人たちはそうやって考えている人が多いんじゃあないでしょうか?

 そんな心持ちで報道が成されてるっていうのは、国民=王様というこれまで繰り返してきた民主主義の比喩から言えば、王様の耳もとで「あいつ気に入らないから左遷しましょう」と囁き続けてくる部下が居る、という状態です。それがいい状態のわけがない。

 社会正義が何か決めたり、誰を裁くかを決めたり、ましてやどっちの方向が正しいか決めたりするのは、王様=国民で、マスコミではない。それが民主主義であり、ジャーナリズムというもの。

 

 これについて僕は、公文書偽造に怒ってる人らと同じぐらい怒ってるので、もう一度書いておきます。

 

 「国民を正しい方向に導く」のはジャーナリズムではないそんなのはただの扇動だ*9。 

 

 今の日本の職業報道人たちには、ジャーナリズムと民主主義の関係がわかってない人が多すぎる。自分は報道を職業にしてるからジャーナリストだ、ぐらいに思っている人が多い。少なくともそのように見える*10

 

 

+もう望まれてすらない民主主義

 

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 もう一つ、もっと根本的な問題について述べておきたい。

 民主主義はそもそも望ましいのかどうか

 多くの専門家や活動家が民主主義を守らねばならないということを、「ベストではないが、ベター」だとかよく言いますが、皆様はそのことをどれくらい本気で検討しましたか? なぜベターだと言えるのか、ちゃんと根拠を持っているか

 

 念のため最初に述べておきますがが、これは答えの出ない問題です。

 社会科学ってのはそういうところがあって、本当の科学なら、民主主義を採用した国と採用してない国を実験室にそれぞれ1000個づつ培養して実験しないといけないのだが。そんな訳にもいかないので、だから答えは出ない。

 しかし、正確なところは分からなくても、世界史を勉強することで明らかに嘘かどうかぐらいは判断がつくことがあって。そういう視点から見て明らかな嘘の根拠を持っている人が多いんじゃないかと思う。

 

 例えば、民主主義が望ましい根拠に、自由・権利・平和などを挙げたら、それは嘘です。よく知られているように、ナチスドイツの蛮行もイラク戦争の行為も民主主義制度下で行われたのであって、民主主義であるかどうかはそれら理想の実現とあまり関係がないのが明らかです。

 あるいは、自由民主主義社会は経済的に発展する、という考え方もある。これは冷戦下でソ連とアメリカを対比したときに言われていたもので、古いが強力な思想です。昔はこれが正しいとされていたが、21世紀現在、だいぶ怪しくなってきました。というのも、自由化を進めたソ連は別に豊かにはならなかったし、民主化が不十分な中国がむしろ迅速な決定対応で経済的有利を築いているからです。

 あとは、民主主義でなくなった国では国民が弾圧される、という考え方もある。これは実際の弾圧の例を聞くことも多く、まあまあ有望ではないかと思います。しかし個人的にはどうかな。というのも、僕たちって今、まったく弾圧されてないと言えるんですかね? 犯罪被害者の家に野次馬やマスコミが殺到するのと、特高警察がやってくるのとで、どれほどの違いがあるのか?

 あと、逆に「民主主義が望ましくない理由」だってありますよね。

 一番わかりやすいのは、民主主義国家は戦争が弱い。これは歴史が証明した純然たる事実であって、ギリシャやローマが強かったのは進めたのはペリクレスカエサル等による独裁制が強かったころだし、中国王朝もヨーロッパ諸国も王権が弱くなった国から滅んでいったし、逆になんだかんだいってナチスドイツも大日本帝国も(しばらくは)勝てた。普通、戦争が弱いと国は滅んでしまいます。今は核とかテロとかのせいでそうとは限らないが、自国の繁栄だけで考えるなら、戦争が強いに越したことはないのは確かだ。

 

 既にここまでの話で、ネトウヨがクソ議論をぶち上げてる、ぐらいに読んでる人も多いかもしれない。でも、ここで僕が訴えたいのは、「だから民主主義は捨てるべき」とかいう話じゃあないんですよ。主権を持っている国民自身が、こういう主張に説得力を感じはじめているってことを、もっと重要視したほうがいい

 国民主権を完璧に貫くのであれば、民主主義っていうのはもう捨てられるか、少なくとも弱体化するのが当たり前なのが昨今の世界です。トランプが当選したり、ブリグジットが起こったり、あるいはもっと身近かつ単純にネトウヨを良く見るとかいう話は、国民がそれを望んでいるということです。そのことをもっとよく考えてほしい。「民主主義を守るっていう結論に至らないやつは一部のアホ」みたいな考えを持っているとしたら、そいつがアホだと言わざるを得ない

 普通に生きてたら民主主義なんて馬鹿らしくなるのが今の社会ですよ。

 みんなそれくらいの不利益や不満は抱えている。

 

 なので、公文書偽装が発覚したからと、民主主義が死んでいる! と騒ぐ人たちを、僕は冷ややかな目で見ざるを得ない。民主主義が死んだかどうかより、制度とは無関係の民衆が救われているかを話したほうがいい。さもないと本当に民主主義は死ぬ。

 

 

+民主主義に唯一現存するメリット

 

 ドラフト会議でくじを引く人達のイラスト

 ここからは少し趣旨が変わります。

 民主主義の死についてじゃなく、生についても述べないといけない。民主主義のデメリットばかり述べると、まるで民主主義滅びろとか言っているみたいですが、僕は明確に民主主義は守らないといけないと思っています。でも、それは国民の権利や自由がどうこういう話じゃない(民主主義でそれが守れるという話は上で確認したようにウソです)。

 

 民主主義が「ベストではなくベター」である実際的な理由があるとすれば、それは流動性の確保という一点に尽きる

 民主主義社会っていうのは、衆愚政治に陥りやすくて、しばしば政治は迷走する。戦争にも弱いし、そのくせ戦争大好き人間がリーダーになることも多い。社会はすぐに混迷に陥り、対立が煽られやすいところがある。マスコミは暴走するし、官僚は不正をするし、決定が遅いから科学技術や経済の発展にも最適とはとてもいえない。

 しかし、選挙が正常に行われている限り、内戦が起こらない

 流動性があるので内戦がおこらない、というこのたった一文が、民主主義制度における唯一最大のメリットです。

 

 これが王政や独裁制であれば、政権が交代するときには必ず内戦が起こります

 王政による統治は、いまよりもずっと安定していて、いったん賢王が統治につけばその先の数十年間は民衆が政治のことを何にも考えないでもオッケーで、民主主義よりもずっと安心感が強い。王が賢ければカリスマ統治で黄金時代を築く事もしばしばある。しかし盛者必衰。永遠に賢いまま存続できる政権など存在しません。けれど、愚かな独裁者が自分の権力を守らない訳がないし、独裁者から権力をはく奪するには武力以外の方法がない。

 王政・独裁制を採用している国家は、将来的な内戦があらかじめ確定しているということです*11。これは歴史的にも理屈的にも明らかなこと。安定すぎる社会はしばしば硬直的で、組みなおすときに必ず破壊を伴ってしまう。

 

 民主主義にとってもっとも大事な要素とは、何年かに一度選挙が行われ、その結果によって政権の強弱や、政権担当者自体の変更が成されることです

 どんなクソ政権が今の政治をおこなっていても、数年たったら入れ替わるのだから、わざわざ暴力に訴える理由がない。だから内戦やクーデターが起こらない。

 このメリットだけが、ほとんど死にっぱなしの民主主義制度を、今なお意味ある制度にしている。と僕は思います。国民の権利がどうとかいう他の理由は、ほとんどは関係ないか、関係あるとしても今は実現していない理想ばかりだと思う。

 

 逆に言ったら、ちゃんとした選挙が行われてさえいれば、民主主義は別に死んでなんかいないとも考えられる。選挙が不正で正常に行われなかったとかいう理由で起きる内戦が国際ニュースに載ることがありますが、あれこそが真の「民主主義の死」です。公文書偽装が見つかったとしても、それが選挙結果に反映されるなら別に民主主義的には構わないんですよ。

 

 

+唯一のメリットを潰してやしないか

 

選挙ポスターを見る人達のイラスト

 しかし、そういう前提に立つと腹立たしいのは野党だ。

 野党、特に立憲民主党共産党ですが、彼らは選挙で勝つ気がない

 少なくとも、選挙で勝つための最適戦略を取っていない。 選挙っていうのは、結局のところ人気投票ですよ。一番票を取ったやつが勝つ。その為には、多数派の支持を得ることが必須です。デモに参加してる少数派からいくら熱烈に支持されても過半数議席はとれないんです。

 

 例えば、政権交代を目指す視点でいえば、憲法改正反対をメインの主張に据えるのは絶対にNGです憲法改正の賛否はかなり明確に、ピッタリ半々に国民の意見が割れているので、憲法改正反対をメインに打ち出すのは、票の半分を取り逃すことに等しい。

 だから安部自民党はそれをしませんね。せいぜいサブに添えるだけ。

 でも野党は憲法改正をメインにしますね。

 それで勝てるわけがない。

 

 同じような理屈で、野党と野党支持者の今やってることのほとんどが否定できてしまう。

 まず、安部自民党批判を繰り返すのは選挙的にはNGですね

 確かにかつて、民主党は、自民批判を繰り返すことで一度政権を取りました。しかし懲罰的投票行動の結果、民主党政権はヒドかった、というのが国民の大方の評価です*12。ですので、もう一回自民党の悪を主張しても、自分の人気にはならず、政治不信が進んで投票率が下がるだけ。そして投票率が下がると組織票の強い自民・公明党が有利になる。あと単純に人の悪口を言ってる人はイメージが悪くなります。「アベガー」とかネットで言われてるのは選挙的にマジでやばいですよ。

 最近やってた国会欠席戦術も選挙的にはNGです

 こればっかりは、いくら政治の専門家が正当性を主張したり、自民も昔同じことをしたことを主張したり、それらの主張がいくら正しいとしても無駄。仕事してない、ということがプラスのイメージにつながる訳ないでしょう*13? 昨今は労働ストですら、何週間も前から告知したうえ1日だけで終えたりするというのに。

 アベノミクスの効果の無さをアピールするのもNGですよ

 本当に効果があったかは確かに不透明な部分はありますが、現実問題として、アベノミクスに効果があったと感じる国民がかなりの割合いるのだから、これを否定してもなんの意味もない。彼らを取り込めるような"もっといいアベノミクス"を提案するのがどう考えても常道です。ましてやドアホノミクスだとかいう造語を述べても、大半の人は言ってる言葉が下品っぽいから離れる。

 

 総じて言って、無党派層を取り込む、という選挙の大・大・大原則を忘れているとしか思えない

 リベラル活動家の支持でまあまあの支持率を取れたので、それで目が曇っているのでしょうか? そういえば政権交代とかも、もうあまり言わなくなりましたね。*14

 人気を取ることに興味がない野党は、当然与党よりも人気がないので、今回の公文書偽造問題も選挙結果にあまり反映されないでしょう*15。これこそが今の日本で最も重要な民主主義の機能不全であり、本当に民主主義を憂うなら考えないといけないことだと思う。

 

 

+守りたいのは民主主義か、正義の自分か

 

 まとめます。

 

  • 公文書偽造は確かに民主主義の危機です。
  • でも日本の民主主義は公文書偽造なんかなくてもずっと危機的でした。
  • 危機に陥っていてもかまわないという考え方すらある。
  • いくら危機的でも選挙さえちゃんと動いてればオッケーです。
  • 今の野党は選挙に勝とうとしてないからダメ。

 

 まあこんなこといっても、大概無駄なんでしょうけどね。今の野党を支持してるようなリベラル活動家が、自分が「正義」であるという思想を転向して勝利を目指すことなど、僕も期待していません。だからどんなに不祥事が出てきても自民有利は続くだろうし、そのことに安堵と絶望を同時に感じています。

 でも誰かに伝わってほしい。

 公文書偽造にいまのやり方で怒っている限り、野党とリベラル派は勝てないし、本当の意味で「民主主義は生き返る」には、彼らが選挙に勝ち得る存在にならないといけないんだと思っています。

 そのためには、思想上の正義なんか捨てて、真の理想実現に向けた合理性を取らないといけないよ。野党とリベラル派の皆さんは、悪と戦ってりしてる場合じゃないんだ。ほんと。

 

*1:ここで「国民」とは何なのか? という話にもっていくと、ルソーの一般意思とかいう話になるのですが、今回は記事のテーマがとっ散らかるので省略。

*2:なお、この記事の後で確認するように、この理想のプロセスはちゃんと成立したことがありません。この点を指摘して、理想の民主主義などないのだとよく言われる。

*3:この後の話を僕は「きみたちホントは民主主義に必須だからじゃなく、公文書偽装が単にズルい感じだから怒ってるだろ」という風に持っていくつもりですが、ここでは一旦、誰もが民主主義のために怒っていることにします。

*4:民主主義の場合は選挙で王様の支持を仰ぐのもコストがかかるので、基本的には代理総督の人事ぐらいにしか王様は口出ししませんが。

*5:よく言われるのは、今の日本では若者ほど投票率が低いせいで政治が若者を冷遇しがち、とか。

*6:集合知について述べた名著、スロウィッキー『みんなの意見は案外正しい』では、集合知が正しい答えを出す条件の一つに、一部ではなく全員の意見を集計すること、を挙げていました。無効票が多い選挙は単純に結果が間違っている恐れも強いです。

*7:相手がアホかどうかや不誠実かどうかは関係ないですよ。念のため。

*8:もとが"倫理観"とかいう曖昧な趣旨なので、ジャーナリズムへの考え方は専門家でも相当ブレがありますが、僕はこれくらい言うべきだと思います。

*9:念のため、僕以外に同じことをもっとマトモに言っているブログを紹介しておきますね。http://sakaiosamu.com/2015/0109080045/

*10:これには昔から言われている原因があって、欧米ではマスコミに就職するのはジャーナリスト大学を出た学生だったりするそうですが、日本の特に大手新聞社・テレビ局に就職するのは、多くの場合学歴が高くて見た目に優れている人です。ジャーナリズムを専門に勉強した学生は、使いにくいので積極的に面接で弾かれると聞きます。

*11:この点、中国は非常に自覚的なのが強い。極端な民主化による内戦を警戒しながら、出来る範囲で流動性を用意しようとしていると思う。ロシアのプーチン政権も自覚はあるけど、対応策が「さらなる盤石化」なので、プーチン後にまたペレストロイカ的な内戦状態になるんじゃないか。北朝鮮はヤバイですね。体制が今のままなら、2・3世紀以内にクーデターは起こる。実際今の代になるときに血みどろの闘争はあった訳だし。なお、この脚注は全部僕の妄言です。

*12:野党の首脳陣がこの「国民の大方の評価」を把握してないかもしれないというのが、また頭の痛い点だが

*13:これを書いていた時点ではまだだったのですが、その後、実際にイメージがマイナスになりすぎて欠席戦術は失敗した、という報道が出てきましたね。

*14:こういう行動の不合理さは、きっと民主党の議員さんも多くの人が感じていたと思う。希望の党に流れたり、国民民主党を作ったりしたのは、そういう層だったんじゃないかと僕は想像しています。だから国民民主党にはちょっと期待している。

*15:しかも野党支持活動家は自民支持の多数派をしばしば「やつらはアホだから自民支持なんだ」とかいう。だとしたら君たちがアホに合わせないから勝てないのです。自民支持者の悪口を言っている皆様は、自分が野党の選挙の邪魔をしていることを認識したほうがいい。