能書きを書くのが趣味。

文章がすぐ長く小難しくなるけど、好き放題長く小難しく書く。

ライトノベル

上遠野浩平論⑩(終)~未来へと向かう上遠野浩平(『螺旋のエンペロイダー』『不可抗力のラビット・ラン』『パンゲアの零兆遊戯』など)

上遠野浩平論の第10回です。今回で最終回になります。 前回の第9回では『ヴァルプルギスの後悔』で起きた魔女消滅後の世界を〈一巡後のセカイ〉と定義し、また〈一巡後のセカイ〉を舞台とする『ヴァルプルギス』以降の作品群を第3期上遠野浩平と呼ぶことを…

「上遠野浩平論」⑨~魔女の消滅と「可能性」の復活(『ヴァルプルギスの後悔』)

上遠野浩平論の第9回です。 本論はこれまで、第5回・第6回では「可能性」を描いた第1期上遠野浩平について、第7回・第8回では「運命」を描いた第2期上遠野浩平について、それぞれ論じることで、デビューからゼロ年代にかけての上遠野浩平が、どのよう…

「上遠野浩平論」8.5~キャビネッセンスと生命と心(『ソウルドロップシリーズ』)

上遠野浩平論の第8.5回です。 第8.5回、という言い方をするのは、今回の記事では本来この連載が目ざす文学論の論旨にあまり必要ない話をするので。もともとは第8回で〈戦士〉の話をするついでに、1パラグラフぐらい使って簡単に触れておこう、ぐらいに思っ…

「上遠野浩平論」⑧~〈戦士〉の条件(『ぼくらは虚空に夜を観る』ほか)

上遠野浩平論の第8回です。 本論は、上遠野浩平の作品世界について文学論的検討を行うことを目指している。前回の第7回では、だいたい2000年以降の作品群を第2期上遠野浩平と呼ぶことを提案し、その第2期では〈決定論的な運命〉という概念が上遠野世界の…

「上遠野浩平論」⑦~決定論的な運命(『パンドラ』『ジンクスショップ』『酸素は鏡に映らない』)

上遠野浩平論の第7回です。 いま本論は、連載の第5回以降を第二章と位置づけ、上遠野浩平の文学が追及してい美意識・問題意識について検討している。その初めとなる第5回と第6回では、「可能性」が上遠野文学の中核であるとの認識の元、〈世界の敵〉とい…

「上遠野浩平論」⑥可能性に基づく種々の考察(作品いろいろ)

上遠野浩平論の第6回。 前回の第5回では〈世界の敵〉というモチーフがどのように描かれているかをしてるか検討することによって、上遠野浩平の中に、「ヒトには無限の可能性があるという」前向きな希望と「可能性は将来的に必ず失敗する」との悲観的絶望が…

「上遠野浩平論」⑤〈世界の敵〉はなぜ敵なのか(『夜明けのブギーポップ』『VSイマジネーター』)

上遠野浩平論の5記事目。ここからは第2章です。 第1章に位置付けた第1~4回では、上遠野浩平という作家の来歴を中心に見ることで、この作家が所謂「セカイ系」に属する作品を書いていること、それはブームを狙ったのではなく、むしろブームのほうが上遠…

「上遠野浩平論」④傑作セカイ系作品にみる天才性(『ブギーポップは笑わない』)

祝アニメ化!!!……とは、関係なく書いていた、上遠野浩平論の第4回です。 期せずしてタイムリーなことになった。 第1回・第2回・第3回まで、上遠野浩平という作家の生い立ち・性質・執筆スタイルを詳しく検討することで、上遠野浩平を論じる上での基礎…

「上遠野浩平論」③上遠野浩平の創作哲学(『製造人間は頭が固い』)

上遠野浩平論の第3回。 第2回では、エヴァよりも前に書かれたと思われる投稿時代の作品が既にセカイ系の特徴を踏まえていることを通して、上遠野浩平はセカイ系ブームの影響を受けていないのだと主張した。 今回は、更にその主張を補強するために、上遠野…

「上遠野浩平論」②誰より早くセカイにたどり着いた作家(『冥王と獣のダンス』)

上遠野浩論の第二回。 前回は上遠野浩平のプロフィール、あとがき、インタビューの証言を基に、上遠野浩平がどのような人生を送ってきているかを探り、それが作品のバックボーンとなっていることを確認した。 今回からはいよいよ文学論らしく、発表作品の分…

「上遠野浩平論」①上遠野浩平という人物(インタビュー・あとがきなど)

今回は、上遠野浩平、という作家について書きます。 作家名だけを言われてピンとくる人がどれだけいるのか。ガチ中のガチファンである僕には逆に想像がつかないが、「あのブギーポップの」という言い方をすれば、まあ結構な数の人が知っているのではなかろう…